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「マダム・ギター」とは、思わせぶりな。

きっと怪しい連中が、悩ましい音を鳴らしているんだ。間違いない                                                                            


甲本ヒロト




長見 順のギターはひたすら寂しい。

雄弁なようで、ちっとも目線を合わしてくれない。ムーディーなようでいて、ホヤやナマコの歯応えだ。

ブルースギターの偉人たちが落としていった大切なピースを、しっかり拾い集めて雨を降らす。

ギターってやっぱ人やわ。                                                                                                                                    


くるり/岸田繁




つまびくフレーズはむぜび泣いて

口づさむメロディーはウキウキステップふんでる。きっと指がお父さんで 口はお母さんなんだ。

一人夫婦(※ルビ、めおと)状態なんだな!聴いてたら ハートのわき腹くすぐられて

一人なのにおどりたくなっちゃうし。声出して笑っちゃうし。ごきげんだ!

また近所の人に変な目で見られちゃうよー。                                                                                                              

 

ハナレグミ




マダムは、冷蔵庫の中から食材を出し、調理するように彼女の音蔵庫から音材を次々出して

手際よく料理した新曲を聴かせてくれる。

でもそのテイストのベースに、日本の女性には希なブルースやジャンプの味がしっかりとある。

そしてキュートな歌声と同一人物とは思えないシャープだがどこかイナタイ見事なギターに

舌鼓!!他では味わえないマダム・ギター順の音の手料理をこのアルバムで、またライブでご賞味あれ!!


永井”ホトケ”隆



長見順が新譜を出すという。

おいおい、『OYAZI』を出したのは、ついこの間ではないかね。気は確かか。

届いた郵便物を開けると、『マダム・ギター』だと。

やっぱり、確かじゃないわ。「ニッポン人のベッシーちゃん」「ムードシナ」曲のタイトルだってこの通りだ。

音の方は?

ブルース、ジャズ、ファンク、歌謡曲、その他なんでも。壊す、壊れている、

というより圧倒的にズレてズレて、ズラして、ズレて。

世の中と折り合いをつける気があるのかね。

そりゃ気持ちいいだろう。

頭の中は覗いて見たいが、私生活は覗きたくない。

そんな気にさせるOYAZI長見順。

なんだかもう、向うところ敵なしではないですか。                                                                                                          


小出斉




マダム:貴婦人、女主人、奥様。(ポケット版カタカナ語辞典による。)

してみると何か? 今回の順ちゃんのアルバムは「貴婦人ギター」、という事なのか?

ええっ!? あんなにグビグビと焼酎を飲みながら好き勝手にいない人の悪口を言う順ちゃんが貴婦人なわけは無い! 

許せない!

と憤る方もいるだろうが、そこにギター、という一言が加わると、そう、インストの「マダム・ギター」を聞きながら目に浮かぶのは灯の落ちた誰もいない次郎吉の店内、緩やかに流れる時間の中で優雅にメロディを紡ぐ順ちゃんの姿、

貴婦人っぽいだろ?もしくは「女主人ギター」? はいはい!

それは仰せの通りだと思いますね。何しろ一曲目のS波さんにK山さん、に代表される重鎮達を従えての演奏、

正式に発注したら一体いくらかかるのでしょう、という超一流プロデューサーF井氏によるウチコミ、

そんな意味ではみんな順さまにかしづいてるわけで、これもその通り。残るひとつが「奥様ギター」。

それはもうね、大半の曲で聞ける旦那のO地氏のドラム、

これも奥様だからこそ、っていうよりもゲストのブッキングからスタジオ手配、

録音工程管理からジャケ写撮影の段取り、私の弁当購入からつけ届けの配慮まで、

ありとあらゆる世話を焼いてくれるプロデューサーがいたのも、それは奥様ならでは、だったのです。


吾妻光良

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