24.東京、目黒区役所、晩秋、午前11時。
わたしは、母に頼まれ、年金の更新に必要な戸籍謄本を目黒区役所までとりにいくことになった。
風が冷たい。あしたからはもうコートを着よう。
しまった、ハンコ、忘れた。
区役所の自動ドアが開き、戸籍係の方へ。
「すみません。・・・戸籍謄本とりにきたんですけど、あの、本人ではなくて、娘なんですけど、ハンコは必要ですか。」
・・・「ヒツヨウデス。」
「あ、そうですか、あの、ハンコ、忘れてきちゃったんです。どうしたらいいですか。」
・・・「キョウノトコロハハンコナシデイイデス。コンドカラハワスレズニモッテキテクダサイ。」
と、コンピューターの窓口は答えた。
役所とは、いつの時代も、まったくもって、わけのわからぬところだ。
そんなことを思いつつ、わたしは、内心、ラッキー。と、思った。
わたしは、イスに座って、名前が呼ばれるのを待った。
・・・「。。。サン。」
座っていたイスに、軽い電気を感じたわたしは、そのまま戸籍係の窓口へと向かって歩いた。
「。。。ですけど。」
・・・「。。。サンデスネ。アナタノハハオヤノホンセキデアル、メグロクシモメグロヨンチョウメキュウヒャクヨンジュウバンチハ、ソンザイシテオリマセン。」
(02.9.23)